 文：高橋達郎 吹けよ川風、揚がれよ簾、中の小唄の主見たや こんな唄で当時の屋形船はもてはやされた。暑い時季、江戸市民は隅田川に好んで出かけた。武士も庶民も男も女も暑いのはみな同じ、隅田川は涼をとるには恰好の場所だ。いろいろな船遊びもできるし、花火も楽しめるし、川岸には茶屋や出店も多かった。 吹呀河风 荡呀竹帘 你可见到里面的唱曲人 这首小曲在当时的屋形游船广为传唱。炎热的季节里，江户市民都乐此不疲地涌向隅田川。无论是武士还是庶民，也无论男女，大伙儿对炎热的感觉都是一样的，而隅田川正好是一个消暑的好去处。这里既能泛舟川上，又能观赏烟花，河岸上还有众多茶铺、路边摊。 船遊びはかなり粋でおしゃれな遊びだったと思う。屋形船は、納涼船として活躍した。「のうりょうせん」でなく、江戸の話なので「すずみぶね」と読んでいただきたい。この絵の屋形船の光景は豪勢だが、ここまでいかなくても、一般庶民も船の大きさや遊びの内容は違っても、十分楽しめた。その証拠に当時の多くの図会には相当数の大小の船が川面に浮かび、楽しむ人々が描かれている。 说到泛舟游玩，会觉得是一种格调高雅的娱乐。屋形船则是作为纳凉船盛行一时。这里的屋形船不读作“のうりょうせん”，因为是江户话，得读成“すずみぶね”才对。这幅画中的屋形船看起来甚是豪华。而普通的庶民即使与这种豪奢无缘，船的大小和游玩内容即便不同，也能充分享受乐趣。当时的众多图画中描绘了许多大小船只浮在水面，人们乐在其中的情景便是一个证明。 屋形船は江戸時代に登場した。江戸後期の随筆集『甲子夜話(かっしやわ)』によれば、慶長年間(1596～1615)に、評定所(ひょうじょうしょ)から命じられて吉原では、遊女を給仕に召し出すことがよくあり、その道中は必ず船を用いた。夏の炎天のときなどは、か弱き遊女には難儀ということで、その船に屋根を作って簾(すだれ)をかけたのが始まりという。そのさまが涼しげで風流だったことから、これを真似て屋形船が造られるようになった。 屋形船出现于江户时代。在江户后期的随笔集《甲子夜话》中记载，庆长年间（1596年—1615年），在评定所的命令下，吉原经常会派出游女前往伺候酒宴，途中必定会用船。遇到炎热的夏天，身体虚弱的游女往苦不堪言，因此就在船上铺设了屋顶，挂上竹帘，而这便是屋形船的开始。由于外观雅致，给人凉爽之感，其他人也对此效仿，纷纷造出了屋形船。 評定所は本来、寺社奉行・町奉行・勘定奉行や老中が集まる所で、内閣と最高裁判所を合わせたのような役所である。そんなお堅い役所でまた何で吉原から遊女を出張させたのだろう。老中も奉行もみな男だから分からなくもないが…。ただ当時の高級遊女のとらえ方は、高貴で、芸に秀でたスーパースターであったことも事実である。 评定所原本是寺社奉行、町奉行、勘定奉行或老中聚在一起的地方，也就是综合了内阁和最高法院的政府部门。在这样一个严肃的政府机关里，为啥会让游女从吉原远道来此呢？因为老中也好，奉行也好，全部都是男性，当中的缘由自然明白，不过话说回来，在当时人眼里，高级游女是气质高贵、精通艺术的“超级明星”，这也是个不争的事实。 時代が経つうちに屋形船は納涼船(すずみぶね)として流行した。大名などは大勢のお供を連れて船遊びをするために、次第に大きく華美になっていく。この流行も明暦3年(1657)の大火で一端はストップ。それは、大火後に必要な建築資材の運搬用の船として造り変えられたからである。しかし数年して江戸の町が立ち直ると、以前にも増して屋形船は一層流行し、さらに装飾にも金銀をあしらい、贅沢なものとなって巨大化した。 随着时代变迁，屋形船发展为纳凉船流行起来。由于大名等显贵率领众多随从泛舟游玩，屋形船也逐渐变得更加华美。这个流行由于明历三年（1657年）的火灾而暂告停息。这是因为在火灾后，屋形船被改造为运输必要建筑材料的船只。不过几年后，江户的市街又恢复了往日的繁华，屋形船的流行势头胜过当年，甚至还装饰上了金银，愈发奢华起来。 延宝年間(1673～1681)には大屋形船二艘を大きな板で繋げて舞台をつくり、「踊り船」を建造した例もある。幕府は度々屋形船に関して禁令を出している。元禄(17世紀末)の頃には、屋形船は大きさや数も制限され、豪華なものはもうなく、大名は所有さえも許されなかった。そうして、船宿や料理屋が所有する比較的小さな屋形船だけが後世に残ったのである。 延宝年间（1673年-1681年），还出现了建造“踊船”的事例，在两艘大型屋形船上搭设一块大木板，制造成舞台。幕府对屋形船多次发出禁令。元禄时期（17世纪末），屋形船的大小和数量遭到限制，豪华的大船消失了踪影，大名甚至连拥有都不被允许。就这样，流传后世的也就只有船宿、料理店所拥有的小型屋形船了。 |
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